目の保養になるキャスティングとRPGをプレイしているような感覚になる映画
今回レビューするのは「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」。
リュック・ベッソン監督、デイン・デハーン主演。日本での公開は2018年です。
ざっくりあらすじ
千の惑星から来た種族の集まるコロニー(宇宙ステーション)「アルファ」がありました。
連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌが惑星キリアンで「ミュール変換器」という食べたものを増殖させる生き物を海賊から奪還する任務に当たりました。
任務に成功した2人はアルファに帰還、2人はアルファの中心部が放射線汚染されていることを知らされる。
それについての種族間の会議中に何者かが襲撃、ヴァレリアンたちの司令官が拉致されます。
ヴァレリアンはアルファの中心部まで追跡を行い、事件の真相に迫ります。
ネタバレ無し感想
僕の好きな俳優トップ3のひとりであるデイン・デハーンが主演のこの映画。最初はデイン・デハーン目当てで映画館へ足を運びました。
好きになったキッカケの映画は「クロニクル」です。これもいずれレビューしたいです。
「クロニクル」といい「アメイジング・スパイダーマン2」といい、怒りで暴走する演技がとても迫力のある可愛い系のイケメン俳優です。
顔に似合わず声が渋いのも特徴。
また、主人公のヴァレリアンだけでなく、ローレリーヌを演じるカーラ・デルヴィーニュもとても魅力的で、鑑賞後は気になる女優リスト入りでした。
キャストも素晴らしいですが、作品の話に戻しましょう。
結論から言うと大満足の面白さです。
しかし、僕はこの映画を実際に観るまであらすじを読んでもピンと来ていませんでした。
上に書いたあらすじも極力分かりやすくを意識しましたが、それでも分からない人向けに書くと……
宇宙の事件を解決すべく連邦捜査官とかいうカッコイイ役職の2人がハチャメチャな冒険をする中で、陰謀だとか愛だとかの問題にぶつかる話です。
あまり難しく考えず、ゲームをプレイする感覚で観てもらうのもありな作品だと思いました。
冒頭に書きました通り、観ているとRPGをプレイしている感覚になるんです。
具体的な話はネタバレあり感想に書きますが、例えば目的地に行くにはあるものが必要で、それを取りに別の場所へ行くといったRPGのあるあるネタのような展開が何度かあります。
舞台となる場所はアルファの1つですが、その中にある様々なロケーションを巡るのでそれがまたゲームのステージを攻略しているような感覚になります。
ゲーム好きな方には是非ニヤリとしてもらいたいところです。
また、恋愛映画としての見所もあります。
主人公のヴァレリアンは、ヒロインのローレリーヌにゾッコンです。
捜査官としては優秀でナルシスト、それでいてかなりのプレイボーイだったという描写が登場直後にあり、言い寄られるローレリーヌはウンザリしています。
話が進むにつれて2人の関係がどう変化するのかも注目ポイントです。
ネタバレあり感想
初っ端からマイナス意見になりますが……
冒頭で物語の舞台となる宇宙ステーション「アルファ」の成り立ちが描写されます。
地球のものだったけど、宇宙人も参加してどんどん大きく増築されていき……最終的に大きくなりすぎたから地球の重力圏から外に出すことに……といった内容。
そこまでは世界観の説明と言いますか、必要なシーンだなと思います。しかし、問題はその次のシーンです。
何の説明もなく、惑星ミュールの日常が始まります。
その直前まで90年代から遠い未来までのアルファをダイジェストで映されていたせいで、「いつ」「どこの」「誰の」描写なのか分からず置いてけぼりになりました。
綺麗な惑星の綺麗な種族が真珠を収穫している様子をみていたら、謎の宇宙船が墜落してきて惑星が崩壊……焦点を当てられていたキャラクターが死ぬ瞬間に主人公ヴァレリアンが目を覚ますシーンに切り替わります。
重要といえば重要なシーンですが、伏線というにはあからさまで、かと言って後から軽く回想で語られたら印象が薄くなるし……難しいところではありますが、個人的にはこの作品唯一の退屈なシーンでした。
マイナス意見はこれくらいです。ほんとに。
さて、ヴァレリアンは登場してからひたすらローレリーヌを口説こうとします。
ローレリーヌはヴァレリアンがプレイボーイであることを知っており、口説いた女リストに入りたくないと一蹴。
任務のために2人は惑星キリアンへ向かいますが、途中も到着後もずっとヴァレリアンはローレリーヌを口説きます。
任務が始まったというのに終いにはプロポーズまでするヴァレリアンの必死さ。
何故ここまで固執するのか、完璧な女性を求めて女の子を取っ替え引っ替えしていたと簡単に語られますが、じゃあローレリーヌは完璧な女性なのかという説明は特にありません。
ヴァレリアンが超優秀でその部下というか相棒なポジションにいるんだから、そりゃ優秀でしょうけど。
あとは、「こんなに完璧な自分に振り向かないなんて……おもしれー女」って奴ですかね。
ちょっと違う気もしますが、とりあえずプロポーズされたローレリーヌは完全に呆れていました。
それでも強く拒否しない(もちろん怒ってましたが)のは、ヴァレリアンに多少の気があるからではないかと思いました。
物語序盤のローレリーヌのヴァレリアンに対する評価は「好意はあるけど無責任な人だしナルシストだから好きって言ったら負けな気がする」かなぁと勝手に想像。
そんな2人の惑星キリアンでの任務は宇宙海賊から「ミュール変換器」を奪還することでした。
ここで惑星ミュールに住んでいたパール人が登場し、最初に退屈と言っていたシーンの謎が少し明かされます。
事件の全貌が語られるのは最後の方ですが、わりと早い段階でパール人が出て助かりました。
ヴァレリアンたちの作戦がスムーズにいかず、苦戦する様が観ていて楽しいのは、その惑星キリアンが特殊な環境だからでしょう。
一見広大な荒野ですが、特殊なゴーグルを通して見ると異次元に繋がっているのです。
手続きを行うことで異次元の物が元の世界に持ち込め、ビッグマーケットと呼ばれるそこでは買い物に勤しんでいる観光客が大勢います。
異次元で敵に追われるヴァレリアンは側から見ると何もないところで1人で走っていたりとシュールな光景でもあります。
そのせいで危機感が外の世界の仲間に上手く伝わらないヴァレリアン側の視点が余計にハラハラするのです。
異次元の(宇宙海賊の飼い慣らした)怪物が元の世界にまでやってきて逃げながら戦うシーンもゲームのワンシーンぽいですね。
ちなみに、宇宙海賊のアイゴンがヴァレリアンに「ミュール変換器」を奪われた際に「覚えておけよ」的な発言をします。
忘れたころにヴァレリアンのもとへ報復にやってくる伏線なのかと期待していましたが、すぐ後に上記の怪物を解き放って以降の出番はありませんでした。ちょっと残念です。
その後、舞台はアルファへと移ります。
展開がRPGぽいと上の方に書きましたが、具体的に言うと……
・ローレリーヌが通信の途絶えたヴァレリアンを探すために海に行ってクラゲを探す。ここだけの協力者のキャラが濃い。
※頭に被るとイメージした対象の記憶を覗けるクラゲ。
・ローレリーヌが囚われたブーラン族の縄張りに忍び込むために、ヴァレリアンが歓楽街へ行く。
※姿を自在に変える宇宙人(グラムポッド族)を探し協力してもらうため。
特にこの辺がRPGぽいなという印象が強かったです。
さて、グラムポッド族のバブルについてですが……
話の展開のために急に出てきた印象です。
自身の能力を紹介しますとばかりに姿を変えて長々と踊り、ローレリーヌやヴァレリアンや上官の姿になってヴァレリアンを惑わします。
長々と踊るシーンはちょっと違和感のある尺でしたが、デイン・デハーンの反応を観るだけで楽しめる僕には特に問題無かったです。
バブルのちょっと寂しい身の上話もありつつ、協力してローレリーヌの救出へ向かいますが、最後は呆気なく死亡。
愛についてヴァレリアンに訴えつつお亡くなりになりますが、ポッと出のキャラというのもあって心に響き難いといいますか……そもそも物語的に死ぬ必要はあったのでしょうか?
存在自体は重要というか、いないと話が進まないようなキャラではありますが……
言い方を変えれば、ローレリーヌがクラゲを捕まえる時の協力者と同じようなそのためだけに出てきた脇役。
短い登場シーンに色々詰め込みすぎた感じが拭えませんでした。
結局、生き残ったパール人がアルファの中心部に隠れ住んでいましたとか、司令官が黒幕でしたとか、なんやかんやの末にハッピーエンド。
王道展開の中で序盤にあったパール人の描写の謎も明かされます。
「ミュール変換器」をパール人に独断で返そうとするローレリーヌと、今は政府の物だからと渋るヴァレリアンのちょっとした対立が印象深いですね。
ここまで来て渋るのかヴァレリアン。
ここでローレリーヌからこれも愛だと説得され、ヴァレリアンは折れます。
ヴァレリアンは今回の事件で愛について考えが改まったことでしょう。
最後にプロポーズの返事を聞いて、ローレリーヌはヴァレリアンを受け入れます。
ここで思ったのは、やはりローレリーヌは最初からヴァレリアンのことが好きだったのではないのでしょうか。
今回の事件でヴァレリアンが考え方を変えたり、変わらないところもローレリーヌは受け入れたり、徐々に関係性が変化したというより、事件がキッカケでお互いの見方が変わったように見えました。
売上的には微妙(というか赤字)の作品ですが、僕は気に入っています。
しかし、キャストが好きだからという補正があるのも事実です。出演者が別人だったら繰り返しは観なかったと思います。
でもデイン・デハーンですから!カーラ・デルヴィーニュですから!
僕はそう言って堂々とオススメします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。