こんにちは。ふじちゅんです。
以前、「エイリアン クラシック・コレクション」をレビューした際に「アメコミ版エイリアンはアメコミ初心者にオススメ」という話をしましたが、じゃあアメコミ版エイリアンの中ではどれがオススメなの?という話になります。
「気になるの読めばいいよ」と言いたいところですが、折角なので参考になるように色々レビューしたいと考えてます。
読みやすいというのは、レビューしやすいわけでもありますからね。
レビュー初心者の僕にも打って付けなわけです。
で、今回レビューするのは「エイリアン3 オリジナル・スクリプト」です。
かの有名なSF作家、ウィリアム・ギブスンが手掛けた「エイリアン3」の没脚本を元に描かれたコミックとして売り出されました。
正直な話、僕はウィリアム・ギブスンについては名前しか知らなかったです。
それでも多かれ少なかれ話題になっていたので、僕は期待して読みました。
世間的に「エイリアン3」のシナリオがイマイチだったというのも、「もうひとつのエイリアン3」を期待させる要素と思われます。
■ざっくりあらすじ
UPP(先進人民連合)の兵士が宙域に侵入したスラコ号内を調査する。
エイリアンエッグに寄生されたビショップを発見し回収する。
ウェイランド・ユタニ社直属下の前哨基地、アンカーポイントにスラコ号(ヒックス、ニュート、リプリー搭乗)とユタニ社の科学者がたどり着く。
UPPとユタニ社はエイリアンのDNAからクローンを作ろうとする。
■ネタバレ無し感想
今回も表紙が3種類となってます。豪華!
通常版はゼノモーフとUPPの女性キャラ「チャン」の対峙。
限定版はゼノモーフとヒックスとビショップ、背景に色々。
豆魚雷限定版は星空を見上げるゼノモーフ。
今回も豆魚雷限定版の表紙が好みだったのでこちらにしました。
決して限定版という言葉に弱いのではありません。ホントだよ!
ちなみに通常版の女性キャラ、出番は多くない(なんならモブと言っても過言ではない)のですが、腕のバーコードが唯一ウィリアム・ギブスンの脚本から映画「エイリアン3」に採用された設定だとかなんとか……
それで表紙になったんですかね。
感想としての第一声がこれってのもなんですが、設定がややこしいです。
「西側陣営とUPP(先進人民連合)の間で冷戦が続く未来宇宙」が舞台らしいですが、西側陣営ってどこ?UPP(先進人民連合)って何?という状態。
(映画で語られてましたっけ?)
冷戦ということで、どちらも生物兵器に成り得るエイリアンを欲しがっています。
ユタニ社は西側陣営のようです。
UPPのお偉いさんとアンカーポイントの責任者であるロセッティが如何にも冷戦下な会話を繰り広げたりします。
ロセッティはユタニ社の強引な命令も聞かないといけなかったりで、今作1番の苦労人な感じでした。
ロセッティを含め、今作の登場キャラ(特にアンカーポイントの乗組員)はみんな魅力があると感じました。
そんな彼らとスラコ号の乗組員が集まってエイリアンに対抗するストーリーは面白かったです。
スラコ号の乗組員!
そうです、映画「エイリアン3」ではリプリー以外死んでしまった彼らが生存しているところが大きな見所ですね。
「エイリアン・クラシックコレクション」でもニュートはビリーとして、ヒックスはウィルクスとして……そしてリプリーも遅れて登場といった感じでしたが、残念なことにビショップが登場しませんでした。
しかし、今作ではビショップも登場します。
表紙を飾るヒックスとビショップの活躍は注目です。
設定のややこしさを乗り切れば、少しの物足りなさ(ネタバレあり感想に書きます)があるくらいで概ね満足でした。
やっぱり「エイリアン2」を生き残ったキャラの活躍が見れるだけで嬉しいですからね。
そうじゃなくてもエイリアンの活躍が見れて嬉しい!
■ネタバレあり感想
今作の最大のポイントとなる「エイリアンの菌?によって人がエイリアンになる」という要素は賛否分かれそうですよね。
僕は無しだと思うんですけど、没脚本として読む分には楽しめました。
それでも、コミックに落とし込むために省略されたのか分かりませんがその設定が活かしきれてないように感じました。
DNAによって作り出されたクローンのエイリアンエッグから菌を吸って2名がゼノモーフ化。(1名がこの要素の初お披露目、1名は察して自殺)
1名が噛まれてゼノモーフ化(しかし変化中に殺される)。
だけ。
もっとゾンビ物みたいな緊張感といいますか「噛まれないように気を付けろ!」って言いながら逃げたり戦ったりとか、「噛まれたこと隠してる」とかあっても良かったんじゃないかなと思いました。
リプリーが薬で眠らされて活躍せず、ニュートも早々に地球へ帰還。
ということで、残ったヒックスとビショップがアンカーポイントの面々と協力してエイリアンと戦います。
エイリアンの恐ろしさを知っている彼らが「どう動くか」というのは、エイリアンの恐ろしさを知らずに動く(ユタニ社の科学者みたいな)愚かなキャラクターを見ていて溜まるストレスをいい感じに発散してくれます。
(僕個人としてはお決まり展開にそれほどストレスは感じませんが)
アンカーポイントの乗組員がわりとみんな賢くてエイリアンの恐ろしさを早い段階で察知するのはテンポが良いなと思いました。
それでも犠牲者がバンバン出るので、なおさらエイリアンの恐ろしさが際立ちます。
最終的にエイリアンの母星に行って根源を断とうっていう流れで終わってしまうのですが、そこは「エイリアン クラシック・コレクション」の最後に通ずるものを感じますね。
もしもこの流れの「エイリアン4」があったとすれば、マザー・クイーンが登場するのでしょうか。
続きがあれば読みたかった(観たかった)です。
気になったのは、人がエイリアンになったゼノモーフが純粋なゼノモーフに攻撃されていた点です。
純粋なゼノモーフとしてはクローンの菌から生まれた元人間のゼノモーフは敵なのでしょうか。
わりと重要な考察ポイントと思います。
総評としては、「もったいない」です。
ゾンビモノ要素を活かせていない、リプリーとニュートの活躍が無い等、物足りなさを感じました。
だからこそ読み終えた際に「あぁ、続きないんだよなぁ」と良くも悪くもガッカリしました。
続きが欲しくなるくらいには面白いのです。
言い換えれば、これ1冊では消化不良なのです。
せっかくコミック化したんだから、続きも誰かに書いてもらえばいいのに……なんて思ったり。
これが「エイリアン2」の続編として納得の出来なのか考えてみても素直にイエスとは言えませんが、映画「エイリアン3」に納得していない方は一見の価値ありかもしれません。
おしまい。