邦訳の新刊がついに発表されたコミック版「エイリアンvsプレデター」。
当時の玩具に付属していたコミックが収録されているということで話題となっていますが、ぶっちゃけ世代じゃなければアメトイに詳しくもない僕は波に乗れていない感が否めません。
そもそも僕は映画版「エイリアンvsプレデター」のファンなので、原作(原案)となるコミックに関しても邦訳が出版されてから存在を知ったくらいでした。
そんな初心者だからこそ「アメコミ初心者にオススメのアメコミ」として今回は「エイリアンvsプレデター」をレビューします。
■ざっくりあらすじ
※プレデターは狩りを行うため、エイリアン・エッグを生物の住む惑星に持ち込む習慣がある。
惑星リュシィの植民地プロスペリティ・ウェルズの新任管理者である主人公マチコ・ノグチは入植者の人々に好かれていない。
ある日フェイスハガーの死骸が発見され、入植者がプレデターと遭遇する。
マチコは責任者として入植者を守るためにエイリアンやプレデターと戦うのであった。
■ネタバレ無し感想
映画「エイリアンvsプレデター」に関しては、エイリアンとプレデターの映画作品の中でも1番好きと言っても過言ではないくらいに好きです。
シリーズファンからすれば、ツッコミどころの多い映画かもしれませんが、個人的にはエイリアンとプレデターの映画のいいとこ取りな美味しい作品だと思ってます。
今回のコミック「エイリアンvsプレデター ブラッドタイム」に関してもかなり楽しめましたし、これまでオススメしたエイリアンのコミックの中でも1番初心者にオススメと言ってもいいくらいです。
これまで紹介してきた、「エイリアン クラシックコレクション」及び「エイリアン3 オリジナルスクリプト」は映画「エイリアン2」までを観ている前提でした。
けれど今作は人間の登場人物が映画と一切繋がりが無いため、観ていなくても楽しめます。
もちろん観ていた方が楽しめる部分もありますが、今作は映画的王道ストーリーなので「エイリアンもプレデターもなんとなく知ってる」くらいでも楽しめるんじゃないかと思います。
(登場人物がエイリアンとプレデターの存在を知らないところから始まるので当然と言えば当然ですが……)
主人公のマチコは、思いやりの無い仕事人間で入植者に嫌われている新任の責任者だったのが、入植者を守るために戦って周りからの評価が変わるという本筋がしっかり描かれています。
この点に関しては、映画「エイリアンvsプレデター」の調査で儀式に巻き込まれただけの登場人物と比べて、物語の中で大きく変化(成長)するコミック版の方が展開も熱いしキャラクターの印象も残りますね。
また、プレデターに関してももう1人の主人公的な立ち位置にあり、モノローグで強引に儀式に参加したブロークンタスクの活躍に目が離せません。
逆にエイリアンは儀式のためにプレデターが用意しただけということもあってか活躍が少ないというか、有象無象の雑魚扱いになっているように感じました。
それでもプレデターが数に押されるシーンがあったり、寄生された人や家畜がいたりとエイリアンならではの恐怖は描かれています。
■ネタバレあり感想
冒頭で語り合っていたスコットとトムはマチコくらいとは言わずとも活躍するものだと期待していたのですが……唯一(唯二?)の人間のフェイスハガー犠牲者となってしまいました。
大した活躍はせずとも、クイーンエイリアンとの遭遇を始めとしたエイリアンの恐ろしさを色々と味わった美味しいポジションではありますが……。
トムは今の仕事に不満を持っていて新しいこと(植民地で牧場の仕事をやるのもいいかもなんて言ったり)を始めようとしていたり、スコットはマチコを口説こうとしたりとキャラは立ってたし、どちらかが生き残ってマチコとの関係に進展があったりと先を想像していたのですが、残念な結果となりました。
逆に言うとエイリアンに直接襲われた人間は少なく、スコットとトム以外の多くはプレデターの犠牲になっていたりします。
最初の犠牲者であるレヴナがプレデターから逃げるシーンは絶望感と迫力がありますね。
プレデターの宇宙船に突っ込むレヴナの表情は印象深いです。
次に襲われるボビーの家族に関しては「何故?」と言った印象。
牙を向けたペットの犬と銃を構えた父親はともかく、逃げ惑う母親とボビーが襲われる理由が分かりません。
今回のプレデターは異質なのか?
疑問が頭に残ったまま読み進めることに。
それはともかく、ボビーの逃走劇は良くも悪くも可笑しいです。
レヴナですら(地形が悪かったとは言え)逃げ切れなかったのに、窓ガラスに突っ込むわバイクで振り切るわと目の前で両親を殺されたばかりの子供とは思えないアクションっぷり。
今作で1番好きな場面です。
結局今回のプレデターが異質なのかは語られませんでしたね。
そもそもあれくらい野蛮なのがデフォルトで、映画のプレデターが生温いのでしょうか。
ブロークンタスクに関しても人間に助けられていなかったら味方しなかったかもしれません。
さて、マチコに関しては珍しく?日本人の主人公です。
仕事人間で効率重視の思いやりも無い上司って感じ……入植者達からは当然嫌われているんですけど、それを分かっているマチコと入植者の微妙な距離感というかぎこちないやり取りが見ていてなんとも言えない気持ちに。
一緒に仕事していた前任者がそろそろいなくなるためか、嫌われていることを気にして入植者にちょっと良い顔しようとするんですけど、そんな矢先にトラブル(フェイスハガーの発見とレヴナの行方不明)です。
それでも嫌われてるからと言って投げやりにならず、常に状況を見定めて仲間を思いやる様子は、なんで今まで嫌われてたの?と疑問に思うくらいリーダーとしての務めを果たしています。
覚悟を決めて戦いに出る……リプリーを彷彿とさせる彼女の言動がとにかくかっこいいです。
でも最後は1人でリュシィに残ってプレデターの次の儀式を待つという狂気。
自分が命を賭けた戦いの中で生を実感出来るタイプの人間だったことに気付いたんでしょうね。
仕事人間からの変貌ぶりにはある種のカタルシスを感じざるを得ません。
ちなみにサブタイトルの「ブラッドタイム」は巻末の読み切りのサブタイトルなんですね。
儀式でズルをしたプレデターが制裁を受けるという話なんですけど、オチで「プレデターってそんな顔するのか……」っていう感想。
コミックならではの表情の豊かさです。
総評としては「面白かった!」ですが、エイリアン好きとしてはもうちょっとエイリアンの活躍を見たかったかなぁといったところでしょうか。
兎にも角にもマチコの活躍するであろう2巻が楽しみです。
おしまい。